京都府亀岡市と市議会が2018年12月13日、「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を行ったことを新聞各社が報じています。
プラスチック製レジ袋の使用を禁止する条例の制定を目指すということなのです。
今日の環境対策のイメージからすると自然なながれなのかもしれませんが、果たしてどうなのでしょう。
私個人の意見は「目的がわからない」のひとことです。
京都府亀岡市レジ袋禁止報道の内容
まだ、実際に条例の議案や議論の内容というものはありませんから、新聞報道の内容を見ていきたいと思います。
まず、市から発表のあった内容は次のとおりです。
新聞各社の報道内容を抜粋
京都新聞
条例の詳細は決まっていないが、従わない事業者に対し、勧告や氏名公表などの罰則を設け、将来的には、科料も検討する。利用客には科さない。世界的にプラスチックごみの環境汚染が問題となる中、桂川孝裕市長は「レジ袋を使わない機運を全国的に広げるため、一石を投じたい」とした。
毎日新聞
亀岡市では1990年代から、市内を流れる保津川の河川敷にプラスチックごみが漂着するようになった。市は今回、条例に罰則を設けるなど厳しい姿勢で臨むことも検討している。今回の宣言に助言してきた原田禎夫・大阪商業大准教授(43)は「琵琶湖や大阪湾でも魚からマイクロプラスチックが見つかっており、もととなるごみは街で発生したものが多い。亀岡市からはごみを流さないという未来を作りたい」と話した。
今回の宣言にはエコバッグ持参率100%を目指すほか、家庭から出るプラスチックごみの回収率100%達成も明示。「30年までに使い捨てプラスチックごみゼロのまちを目指す」としている。
時事ドットコム
市内のスーパーやコンビニエンスストアをはじめとする小売店が対象で、2020年度までに施行したい考え。市などによると、国内の自治体にレジ袋を禁止する条例はないといい、条例化されれば全国初になるとみられる。
河川敷にプラスチックが漂着することは今回の件とは全く無関係な気がしますが、記事に載っていたので引用しておきます。
(プラスチック以外のごみが漂着したらまた制限されてしまうのか…)
レジ袋が環境面で悪だとは言い切れない理由
「レジ袋などのプラスチック製品について詳しくは知らないけれど、環境に悪いということは知っている。」という人は多くいると思います。
しかし、それが本当かどうか考えたことが無い人がほとんどだと思います。
得てして環境問題というものにはバイアスがかかった情報が氾濫しています。
先ほどお伝えしたゴミ袋禁止のポイントの⑧で、市長が「プラスチックごみの環境汚染が世界的に問題になっている」と発言していることから、この条例の主な目的は環境問題に配慮するということになります。
しかし、それは本当なのでしょうか。
一般社団法人 プラスチック循環利用協会が発行する「プラスチックとリサイクル8つの「?」」という冊子にプラスチック製品についてうまくまとめられています。
その中身を見ていきたいと思います。
プラスチックの環境問題
プラスチックとリサイクル8つの「?」に書かれているプラスチック製品の環境への影響と対策をまとめると次のようになります。
プラスチック製品の環境への影響と対策
- プラスチックの生産に使われた原油の割合は、約3%に過ぎない
- すべてのプラスチックの燃焼でダイオキシンが発生するとは限らない
- ダイオキシンの主な発生源は廃棄物焼却のほか、製鋼用電気炉、自動車の排気ガス
- 廃プラスチックは、資源、可燃ごみ、不燃ごみのいずれかに分別して有効活用する努力がされている
- 建材・繊維・肥料、発電用燃料などにリサイクルされている
これを見ると、プラスチック製品の廃棄については一定の対策が行われていることがわかります。
また、石油の利用割合やダイオキシンの発生源についてプラスチック製品の割合がそれほど高くないことがわかります。
プラスチック製品の利便性の高さ
生活の中にプラスチック製品が氾濫している理由には、プラスチック製品の利便性の高さが原因にあります。
プラスチック製品の環境への影響と対策
- 軽くて丈夫、携帯に便利
- 密封性、耐熱性に優れる
- 複合材が品質を長期間保つ
- 透明性があり、着色も自由
- 電気を通しにくい
- 大量生産が可能
プラスチック製品には、一例を挙げただけでもこれだけの利点があります。
食品の包装や乗り物の部品、家屋の断熱材などは、プラスチックの利点を利用することでトータル的に環境に配慮することができているのです。
今回のレジ袋では大量生産が可能であることが大きな利点となります。
また、レジ袋は簡易的にゴミ袋としても家庭内で再利用されることも多くあり、ただ、買ったものを持ち帰るだけのものとも言い切れません。
他の方法で環境に配慮することはできないのか
亀岡市ではすでに焼却炉でも環境に配慮されている
そもそも亀岡市には「桜塚クリーンセンター」という優れた焼却施設をお持ちのようです。
亀岡市ホームページ
「桜塚クリーンセンター」は、市内から発生する燃やすごみを安全で適正に処理するため、3年の歳月を費やし、平成9年3月に最新の技術を備えた焼却処理施設として完成しました。
当センターは、ダイオキシン類をはじめとする有害物質の除去や、施設内の排水は外へ出さないクローズドシステムを採用するなど、周辺の自然や住環境に最大限の配慮をしています。
「平成 29 年度維持管理情報(桜塚クリーンセンター)」を見てみると、ダイオキシン類濃度の基準値0.5に対して、この施設では0.0000012~0.00022というとても低い数値になっていて、十分に環境に配慮されている施設だとわかります。
企業に対して無理を強いり過ぎていないか
私見になりますが、プラスチック製レジ袋を一律に禁止し、さらに罰則を設けるなどの厳しい制限をしても良いのは、「明らかに悪だと判断できる場合」だと思います。
今回の場合、環境への配慮がされていることや高い利便性を考えるとレジ袋が悪だとまでは言い切れないと考えています。
にも関わらず、企業に対してここまでの制限をかけてしまうと、企業は大きな負担になってしまいます。
「別の素材のレジ袋を調達するのか」「袋を持ってこない客に対して清算済かどうかをどう判断するのか」「万引き対策にかかるコスト増」などいろんなことが考えられます。
企業としては罰則がありますから、何かしらの対策が必要になりますよね。
どんな対策であれ企業はコストがかかります。
お客さんにとっても、他県からの旅行者ならこの条例について知らない人も多くいるでしょう。
その場合、レジ袋を持参していないことも当然あります。
そういったことに配慮するために今まではレジ袋を有料化して対応していましたが、プラスチック製のレジ袋を一律使用不可にすることで企業は別の素材のレジ袋を調達するというのは必須の対策になるでしょう。
これにより、将来的に商品価格の上昇が起こる可能性もあり得ます。
従業員の給料が下がる可能性だってあります。
そうすると買い物をする市民の費用負担が増えることになります。
それが嫌な人は車に乗って市外のスーパーにでまとめ買いすることだってあり得ます。
(当然不要なガソリンと時間を使うことになります)
市民は突発的な買い物時にはレジ袋がないため、大量のものを買うことが難しくなります。
小売店を利用する人の利便性は確実に低下しますよね。
そのような利用者それぞれの事情に配慮する方法として、今のレジ袋有料化が有効だったのではないでしょうか。
京都府亀岡市のレジ袋禁止のまとめ
環境に配慮するということはとても良いことだと思います。
ただし、それには市民のデメリットについても十分な検討がされていなければなりません。
現段階の成り行きをみていると、「あまりにミクロ的に問題を見ていないか」と思ってしまうのです。
例えば、亀岡市ならマイカーを利用する人がとても多いと思います。
環境に配慮するというミクロ的な目的であれば、財政を投じて公共交通機関を整備するとか、排気量の小さな乗り物に対しては補助を出すとかでも良いわけです。
でもできないのは、市の財政負担が発生するからですよね。
では、民間企業の費用負担に対しては何も考えなくても良いのでしょうか。
ただ、「自分たちは環境に配慮しているんです!初ですよ!初!凄いでしょ!」と言っているようにしか聞こえないというのがこの件に対する正直な感想です。
最後に今回の報道から抜き出したポイントについてひとことコメントを付けておきます。
京都府亀岡市のレジ袋禁止情報のポイント
- スーパーなどの小売店で2019年度中にレジ袋を一律有料化
- 2020年度までにレジ袋使用を禁じる国内初の条例を施行する予定
- 従わない事業者に対し、勧告や氏名公表などの罰則を設ける
- 将来的には、従わない事業者に対し科料も検討。利用客には科さない。
- エコバッグ持参率100%を目指す。
- 宣言の中に、家庭から出るプラスチックごみの回収率100%達成を明示。
- 世界的にプラスチックごみの環境汚染が問題となる中、桂川孝裕市長は「レジ袋を使わない機運を全国的に広げるため、一石を投じたい」